カルシウム受容タンパク質カルモジュリンは、種々の酵素だけでなく、細胞骨格を構成するアクチンフィラメントの構造にもカルモジュリン結合タンパク質を介して影響をあたえる。本研究の対象のカルデスモンもカルモジュリン結合タンパク質のひとつで、カルシウム存在下ではカルモジュリンと結合してアクチンと反応することができない。カルシウムがないときは、カルデスモンはアクチンフィラメントと結合する。 カルデスモンとアクチンフィラメントとは結合しても、アクチンをゲル化したり、束をつくらせないと本申請者らは、1982年以来主張してきた。ところが、アメリカやポーランドで、カルデスモン自体がアクチンフィラメントの束形成をおこすという報告がここ2年ほどの間にあいついでなされた。そこで、この問題を再検討することにした。 カルデスモンをニワトリ筋胃から抽出、カラムクロマトグラフィで純化するさいに、タンパク濃度を上げるために濃縮の操作をおこなうと、たしかにアクチンフィラメントを束化する作用があらわれた。また、サンプルを凍結して保存し、溶解してもその作用が認められた。しかし、いずれの場合にも、超遠心によって会合体を沈殿として除去すると作用はみられなくなった。すなわち、カルデスモンダイマーはアクチンフィラメントに側面結合するだけであるが、その会合体は、複数のフィラメントと結合して束形成をおこさせるものと思われる。なお、カラムクロマトグラフィーで単離したカルデスモンタイマーも1日以上放置すると会合体が生成されることもわかった。 アクチンフィラメントにトロポミオシンが結合しても、カルデスモンはさらに結合できることが、超遠心法でたしかめられた。この系をつかって、カルモジュリンとの相互作用を追突中である。
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