1981年、Fullerらによって大腸菌染色体の複製開始点(OriC)を持ったプラスミドの複製を粗酵素画分を用いて試験管内で行なわせる系が開発された。その後、複製開始反応およびその制御の分子機構を解明なべく、この系の解体再構成が進められ、現在、ある程度忠実に生体内の開始反応を反映した再構成系が得られている。本年度は反応生成物の解析を中心とした研究を行ない、以下の結果を得た。1.再構成系の検定 再構成系での反応はdnaA蛋白を含む11種類の複製蛋白およびoriCDNAに良い依存性を示す。また【oric^-】DNAは鋳型活性を持たない。複製は超二重らせん(Form【I】)DNA上で開始し、Θ型分子を経て開環型(Form【II】)DNAになる。合成された娘鎖DNAの約半分はfull sizeの長さを持ち、残りの半分はfull sizeから数百塩基の長さに幅広く分布している。以上の結果は再構成系での反応がかなり忠実に生体内および粗酵素画分での反応を反映していることを示している。2.RNA合成の要求性 複製開始にはRNA合成が必要である。このRNA合成が行なわれる際に他の複製蛋白が存在する必要があることが判明した。3.転写開始部位の同定 S1マッピング法を用いてoric近傍での転写開始部位を同定した。最少必須領域およびその近傍に左向きの転写開始部位があることが判明した。右向きの転写開始は検出されなかった。現在より詳細な解析を継続中である。4.プライミングおよびDNA合成開始部位のマッピング S1マッピング法によりoriC付近におけるDNA合成開始部位およびRNAプライミング部位のマッピングを行なっている。oriC内に左向きのDNA合成開始点が多数検出されており、より詳細な解析を継続中である。
|