プロトプラスト融合技術を用い、ダイズの核にイネとダイズの両葉緑体を持つ褐色の雑種カルスを得た。さらにこの雑種カルスからダイズあるいはイネの葉緑体のみを持つ、それぞれ緑色あるいは白色カルスを分離することが出来た。約4カ月後これらのカルスおよびその両親のカルスを用いてストレプトマイシンへの反応を調査した。両親のカルスは光条件下では耐性を示し、暗黒条件下では感受性であったが、イネとダイズの両葉緑体を持つ雑種カルスは光および暗黒条件下で共にストレプトマイシンに対し極度の感受性を示した。しかし緑色および白色の分離カルスは両親と同様光条件下では耐性を示し、暗黒条件下では感受性であった。このように両親および分離カルスのストレプトマイシンへの反応が光および暗黒条件で異なることからカルスのストレプトマイシンに対する反応は光合成機能を持つ葉緑体と関係する可能性が考えられる。またダイズあるいはイネの葉緑体単独に持つ緑色および白色の分離カルスが耐性を回復することからも葉緑体がストレプトマイシンに対する反応に関係していることが推察される。しかしストレプトマイシンに対する反応が他の細胞小器官に依存している可能性もこの研究では否定できなかった。また両葉緑体を持つ雑種カルスが光および暗黒の両条件で感受性となる原因についてもこの研究では不明である。一年の長期培養後、両葉緑体を持つ雑種カルスを細分し、光条件下でストレプトマイシンに対する反応を調査したところ、4カ月目に比較してより高度の耐性カルスが多く出現した。この耐性カルスの出現は前述の緑色および白色の分離カルスのように、どちらか一方の親の葉緑体が消失し、片親のみの葉緑体となる耐性を獲得したカルス部分あるいは細胞が増加したためと考えられる。
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