Galaninは1983年、Tatemotoらによりブタ小腸より分離されたアミノ酸29個からなるペプチドである。本品を新しいAspおよびTrp誘導体を用いて全合成し、その生物活性をしらべた。 1.galaninの全合成 (1)新しい合成法の採用 本品は分子中央に塩基によって極めてスクシンイミド化副反応を起しやすいAsp-Asn配列を持っているため、従来のAsp(OBz)を用いて合成することは困難である。このため塩基に安定なAsp(OChp)〔Chp=シクロヘプチル〕を採用した。またN端に酸によってアルキル化されやすいTrpを有するので、この副反応を抑制するために新しいTrp(Mts)〔Mts=Xシチレンスルホニル〕誘導体を採用した。 (2)区分ペプチドの合成 全体を7個の区分ペプチド〔(1-3)(4-8)(9-11)(12-14)(15-20)(21-23)(24-29)〕に分け、これらを合成し純度を確認した。 (3)galaninの全合成 以上の区分ペプチドをC端より順次ラセミ化の少ないアジド法で縮合し保護galaninを得、これを我々の開発した【CF_3】【SO_3】H/TFA法で脱保護し、これをゲル瀘過、高速液体クロマト法で精製を行ない、天然品と同一挙動を示す目的物を得た。 2.galaninの生物検定 本品は持続性のある血糖上昇作用を示し、また、ラット回腸平滑筋を収縮する作用を示した。
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