研究目的:リポキシゲナーゼはアラキドン酸に酸素添加する酵素で、それに続く一連の酵素反応でプロスタグランジン・トロンボキサン・ロイコトリエンなどの生理活性物質が生合成される。リポキシゲナーゼが神経系に存在することを示す若干の知見は報告されているが、その局在と生理的役割の詳細は不明である。脳や神経で含量の少ないリポキシゲナーゼの活性を、一般的な酵素活性測定法で定量的に探知することは困難である。そこで、私達が開発しつつあるリポキシゲナーゼに対するモノクローナル抗体を利用した、サンドウィッチ方式の酵素免疫測定法を適用して、動物やヒトの脳や神経におけるリポキシゲナーゼの局在を定量的に検討することを、本研究計画の目的とする。 研究成果:今年度はリポキシゲナーゼの一種のシクロオキシゲナーゼについて検討した。酵素に対する抗体を2種類選び、一方のFab断片をペルオキシダーゼで標識し、もう一方の抗体とともに、抗原のシクロオキシゲナーゼと反応させて、免疫沈降物のペルオキシダーゼの活性を測定し、試料中のシクロオキシゲナーゼ量と相関させるような測定系を確立した。この方法では、ウシ精のう腺から精製したシクロオキシゲナーゼを、最低1ngを測定することが可能であった。ウシの各組織のシクロオキシゲナーゼ含量を、この方法でスクリーニングしたところ、今迄にシクロオキシゲナーゼ活性の高いことの知られている精のう腺・血小板・腎髄質の他に、胃・胆のう・消化管各部に高いシクロオキシゲナーゼ含量が認められた。また、下垂体後葉および脳のある部分(新皮質・帯状回・海馬・扁桃体・尾状核・被殻など)に、量は少ないが確実にシクロオキシゲナーゼが存在することが明らかになった。
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