抑制性調節タンパク(Ni)は抑制性受容体からアデニレートシクラーゼへ"抑制"の情報を伝達する仲立ちとして働いているが、その作用機構は明らかにされていない。 1.私共は先に部分精製したシクラーゼの触媒ユニットの活性を抑制するタンパク性の抑制因子が部分精製した調節タンパクの粗標品に存在することを報告した。この因子は抑制作用の他に、Ni-αの有するGTPaseを促進させ(3.8倍)、さらにIAPによるNi-αのADPリボシル化を増加させる(11倍)作用を有することを見い出し、この3種の活性を指標としてこの抑制因子を単一に精製した。精製標品は上記3種の作用を全て有しており、その分子量、作用の性質等よりNiのβγサブユニットと同定した。この精製したβγサブユニットはシクラーゼの触媒ユニット活性を40-60%抑制し、その抑制作用にはGTPもNsも不要であった。この結果より、次の様な作用機構を提唱する。即ち、抑制性受容体の刺激によりNiのGDPがGTPに置換され、Niはα-GTPとβγに解離する。解離したβγが触媒ユニットと直接相互作用し、シクラーゼ活性を抑制する。 2.一方、培養細胞においてNiがCyclic GMP含量の上昇に関与していることを示唆する報告がなされている。私共はCaと不飽和脂肪酸により著明に活性化されるグアニレートシクラーゼが脳シナプス膜に存在することを確立した。この酵素をCaと不飽和脂肪酸への依存性を有したまま可溶化、部分精製することに成功した。本酵素の活性化にはGTPが必要であることを見い出した。さらに本酵素の精製の過程において、本酵素活性に著明な影響を有する調節因子様物質が酵素標品に存在することを発見し、高度な精製を行いつつある。その分子的本体並びに性質の解明に努めている。
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