ヒスチジン血症はヒスチダーゼが先天的に欠損しており、そのため血液ならびに髄液中のヒスチジン濃度が上昇し、それに伴って尿中にヒスチジンおよびイミダゾールピルビン酸その他の代謝物が排泄されまた言語と知能の発達遅延をしばしばきたす代謝病であることが生化学的に明らかにされている。しかし遺伝的には本疾患は異質性が高く、ほとんどは常染色体性劣性遺伝をするようにみえるが、中には優性遺伝を思わせるものもあり、複数の対立遺伝子によると考えられ、ヒスチダーゼの欠損が唯一の原因かどうか疑問をいだかせている。そこでこの酵素の遺伝子をクローン化し、そこに認められる特異な変異にもとづく単一の疾患か否かを決定したいと考え本研究を始めた。 実験には、健常者と本疾患患者とがもつヒスチダーゼ遺伝子をそれぞれ分離し、それらの遺伝子の塩基配列を決定して発症の直接の原因をもとめるのであるが、そのためには、適当な哺乳動物の組織から本酵素を多量にかつ高度に精製し、そのアミノ酸配列の全部または一部を決定しなければならない。そこで抽出用試料である肝を容易に多量あつめうる哺乳動物として牛および豚をえらび、本酵素を精製することに努力した。しかしいずれも活性が低く十分に強い精製酵素標品がえられなかった。 やむを得ず比較的活性の高いラットの肝を抽出用試料として用い、熱処理、硫安分画、DEAE-セルローズバッチ法、ハイドロキシアパタイト分画、MonoQ(FPLC)で数百倍に精製し、単-タンパクとすることができた。目下これを用いて抗体を作製中である。
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