本態性高脂血症には幾つかの種類があるが、中でも家族性高コレステロール血症は若年から高コレステロール血症が持続し、強い動脈硬化をおこすことで知られている。この疾患の本態はGoldsteinとBro=u′nのグループによって明らかにされた如く、低密度リポ蛋白(LDL)に対するレセプターの欠損ないし機能異常にもとづくものであって、遺伝子異常のためにレセプターの合成・細胞表面への移行、そしてLDLの結合と細胞内へのとりこみの各過程の障害が見られる。家族性高コレステロール血症におけるLDLレセプターの変異の実態を検討することは、本疾患の病態解明とともに血清コレステロール調節機構を明らかにするために重要である。今回の研究においては19例のホモ接合体から採取した培養線維芽細胞を用い、【^(125)I】標識LDL.LDLレセプターに対する単クローン抗体、【^(35)S】メチオニンを使って、LDLレセプターの変異の多様性についての検討を行い、遺伝関係を明らかにした。解析の結果を以下に略記する。 レセプター活性をほぼ完全に欠損する細胞株の中には、【◯!1】レセプター前駆体の合成も行われないもの、【◯!2】みかけ分子量約12万の前駆体は合成されるが、成熟過程に障害があり、分子量16万の成熟体が殆ンど見られないもの、【◯!3】前駆体から成熟体への正常なプロセシングは行われ、抗体による成熟体の検出でかなりの量のレセプターを認めるが、実際にはLDLを結合出来ない機能障害型、を区別することが出来た。また、LDL結合能がある程度残存する機能不全型の中にも、上記【◯!2】【◯!3】を区別し得た。 LDLを結合出来るが細胞内にとりこむことの出来ない内部転送障害型の1例については電子顕微鏡と螢光抗体法によって細胞生物学的な実証を得たが、さらに上記の生化学的検索によって、レセプターが細胞表面を離れ、メディウム中に遊離していることを知った。
|