研究概要 |
システムを完成するために、今年度は試料処理過程における紫外線照射や過酸化水素水・塩酸による煮沸と珪藻殻溶解との関連、国内のDSDP・IPOD試料のプレパラート作成を中心に検討を進め、堆積物試料・プレパラートのカタログの作成を行なった。試料を泥化するために、紫外線照射や過酸化水素水・塩酸による煮沸を必要とするが、その手法は珪酸重合体からなる珪藻殻の溶解を引き起こす。そのため、この処理はプレパラート作成過程で珪藻種組成が改変するという重要な問題を含んでいる。それを解決するため、珪藻殻の溶解実験をするとともに、処理試料の走査型電子顕微鏡による殻表面微細構造の観察、エネルギー分散分析や反射電子像解析によって形態学的・物質科学的に検討した。その結果明らかとなった下記の事実にもとづき、最も効果的な処理方法が明確となった。紫外線照射による珪藻殻の溶解は顕著でない。過酸化水素水・塩酸による煮沸に伴なう珪藻殻の溶解や、珪藻殻を構成する珪酸重合体からの元素の溶脱は、顕著でないが認められる。なお、過酸化水素水・塩酸による煮沸は、珪藻殻の溶解とともに、発泡による珪藻殻の破壊を促進し、元の種組成改変の要因となる。検討結果によれば、各堆積物試料を代表する珪藻種組成に重大な影響を与えない処理条件として、60分以内の紫外線照射、20分以内の15%過酸化水素水、5%塩酸による煮沸という限界が設定される。堆積物試料・プレパラートの情報化は、堆積物2173試料、プレパラート444試料についてなされ、それらのカタログを作成・印刷した。前者は地理的に北・南太平洋,赤道太平洋,日本海,フィリッピン海,地中海,ベーリング海,南・北太平洋等の試料を含み、地質時代は古第三紀から現世にわたるものである。後者は前者の一部で、国外に送付予定のものを含めて、その作成数は約9000豆である。
|