昭和60年度に行った研究の実績を整理すれば以下の如くである。 1企業関係パネルデータの作成は、次の2項目に分けられる。 (1) 日本興業銀行製財務データのうち、既に購入済の「東決算ファイルI」(金融・保険・証券を除く上場1638社分)の磁気テープをもとに 本学大型計算機センターを利用して、パネルデータの試験的製作を試みた。これを用いた分析は続行中である。 (2) 自動車および電機の2大企業集団を対象に、中核会社、関連会社および協力会社集団にアンケートを行い、また当該集団の法人所得データ等を収集分析した。これは次のような理論的フレームワークを構築するためである。 ア 名部品の価格と生産量の 市場での製品需要に対する変化。 イ 同一製品生産中における、系列企業の変化の条件。 ウ 同一製品の生産寿命を左右する要因。 この研究実績は既に公表したが、更に詳細な分析を続行中である。 2医療・環境関係のパネルデータの作成は 大阪市西淀川区医師会の協力を得て 呼吸器疾患者の定期検診の際に、下記の項目に関するアンケート収集を試験的に実施した。ア.医療保障関係、イ.社会保障関係、ウ.家計関係、エ.環境関係。この結果に基いた分析は現在続行中である。 3パネルデータ解析における統計的諸問題を、1970年代から80年代にかけて米国の実証研究事例に即してサーベイした。その結果次のようなパネルデータ解析の意義を明示しえた。 (1) 個体特性影響を消去した片寄りのない回帰モデルが推定できる。 (2) 時系列回帰モデルにおいて多重共線性を回避できる。 (3) 時系列回帰モデルにおいて動学的な調整仮定を組みこむことができる。以上の理論的研究は、現在続行中である。
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