研究課題
第二年度の研究は、収集した社会調査資料の整理・分析を中心に進めた。1.日本の戦前・戦後の社会調査の系譜に関する研究横山源之助や高野岩三郎らの社会調査を除けば、戦前における生活・貧困問題に関する社会調査の主流は、開明的官僚(中央・地方)によるものであった。とりわけ我々が注目して分析しているのは、大正〜昭和期の、東京市・大阪市・京都市・名古屋市の「社会課」による各種社会調査報告である。これらの厖大な報告書を次のような視点で分類・整理した。「社会調査」というものを、労働者の状態を含む国民生活全体の調査研究と考えると、諸社会調査が直接の対象とした国民諸階層毎にその特徴を明らかにし、そのうえで国民生活全体の構図をとらえることが必要になる。そこで、調査の対象を一般雇用者、不安定就業者、生活困窮者、失業者等々にわけて、調査を分類した。ところで、上記各都市において実施された調査は、直接には行政目的から対象毎の政策・制度を確立・運営するためのものであったが、国民生活全体についての研究は、必ずしも社会調査の手法とは結びつかなかった。むしろ戦後になってようやくブースの流れをくむ社会階層論的立場からの貧困・生活問題に接近する社会調査が本格的に開始された。我々はこの系譜を東大社研の調査研究を中心に整理する作業を一方で進めた。最終年度の報告では、日欧米の比較をしつつ、戦後日本の社会調査の展開についても資料整理と分析を加え、「社会調査とは何か」について解答を与えたいと思う。2.全体研究会は、4回開かれ、内3回は次の方々から報告を受けた。第5回島崎晴哉氏「最近の西ドイツの貧困論」(5.31)第4回中川清氏「戦前日本の都市下層調査」(4.5)第6回関谷耕一氏「戦時の国民生活研究」(11.22)第7回「研究の進め方について打合せ」(3.9)。この外作業グループで数多く打合せ研究会をもった。以上。