研究課題/領域番号 |
60301004
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
平野 宗浄 花園大, 文学部, 教授 (40066329)
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研究分担者 |
沖本 克己 花園大学, 文学部, 助教授 (30103253)
鷲阪 宗演 花園大学, 文学部, 助教授 (20066343)
西村 恵信 花園大学, 文学部, 教授 (40066337)
小林 圓照 花園大学, 文学部, 教授 (60066339)
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キーワード | 差別事象 / 地域的特色 / 臨済宗と曹洞宗 / 業思想 / 如来蔵思想 / 道元の特異性 / 禅語録 / 修行理論 |
研究概要 |
前年度の実績を踏まえ、個別研究と相互の研究協力によって作業を進めた。まず、差別問題研究班は従来の事例報告をとりまとめつつ、実地調査によって差別の具体的事例を集めた。歴史的に寺院が差別の助長・温存に重要な位置を占めてきたことは自明であるが、その解消にむけての動きは地域によって大きなへだたりがあり、また同一地域内においても問題に直面する個々の僧侶の資質が大きな差を産む要素となっている。今後、さらに具体例を蓄積しつつそれらを集約し、展望を拓かねばならないが、現場の問題として、僧侶の再教育、制度的なバックアップのシステムなどが要請されることになろう。また臨済宗と曹洞宗では教線拡大の経緯や儀礼の変化過程も異なっており、これらの歴史学的課題も差別事象の背景を形成する要因ではあるが、その宗派的特色より、一層地域的な特色が強く、かくて民俗学的手法の導入をはかることとなった。歴史班はさし当って日本禅宗の特色を中国と日本の禅の比較思想的見地から検討を加えたが、業思想の誤解と歪曲が日本的特性の一つであり、また教説の重層的発展の経過の無批判な受容が安易な理解を促していることを明らかにした。その中で道元の非日本仏教的特色が明かされた。即ち中国日本を通じて如来蔵思想が大きな比重を占めているが、その本覚思想は容易に現実肯定、差別温存につながることが確認された。そして道元の特異性も教団の維持と拡大の過程で失われ、ここに世俗仏教と真義宣揚の仏教の間に大きなへだたりのあることが明らかとなった。またこの研究の副産物として禅語録の読解が進められ多くの新知見が得られた。現代思想研究班は主として修行の理論や実際面を検討し、世界史的立場から禅の位相を確かめる作業を行なった。儀礼研究とも関連して禅仏教の現代的課題を多角的にとらえる作業を完成しつつある。全て、途中経過にすぎないが成果刊行に向けて準備を進めつつある。
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