研究課題/領域番号 |
60301008
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
後藤 狷士 東京芸大, 美術学部, 教授 (70033165)
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研究分担者 |
角倉 一郎 東京芸術大学, 音楽学部, 教授 (80015263)
鹿島 享 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (90050781)
石川 毅 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (10008063)
増成 隆士 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (60011376)
武藤 三千夫 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (50015301)
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キーワード | 芸術 / コンモン・センス / 比較芸術学 / 比較思想 / 芸術ジャンル / 芸術教育 / 生活世界 / 共通感覚 |
研究概要 |
前年度に続く、「芸術とコモン・センス」をめぐる比較芸術学的研究の焦点を、本年度は研究計画に照らして更に(一)芸術生活と世界との関連(二)個別芸術ジャンル間の交渉の二点に絞り、この線に沿って各研究分担者はコモン・センスの理論的・歴史的・社会的・文化的側面からの究明を手がかりとした。その結果得られた新しい知見としては、後藤はナチュリズムの解析から従来の飜訳語の日本人の美意識・芸術活動に対する限界を考え、武藤はセンスス・コムニスの近代美学史上の精確な概念規定とその適正な位置づけを試み、増成は見る世界としての生活空間を建築物・都市施設のもつ史実ならぬ意味の解析によって読みとらんとし、谷川は西欧伝統の美的共通感覚が十九世紀末に至って解体の運命に直面し新たな文化的営為の必要性に迫られていることを指摘し、鈴木は現代芸術の一代表である映画における視覚的現前としての言語ならぬ文字そのものの新しい象徴を尋ね、大熊はカントから今世紀前期に至る美的体験に顯在化した気分と日常性との重要な連関を説き、石川(毅)もまた日常性の再評価を通していわば前芸術的な生体験の創造性を再確認することにより芸術教育の深化を可能ならしめんとし、石川(満)は仏像の服制の考察から民族的な生活感情と造形性との在りかたを求め日本独特の外来文化受容しかたの意義を問い、角倉は西欧の近世音楽史の動向を音楽性・様式性の研究とこれを裏づける資料研究との関係において解明せんとし、土田は十八世紀古典派の骰子音楽の音楽史的・文化史的役割を追究して西欧的音楽思考の特質を明確化し、鹿島は音楽と造形芸術との接点を音楽図像学の和楽器のもつコモン・センスの意味解読につとめ、佐藤もまた伝統的美意識上の俳諧の芸能的意義の再検討を行い、高橋は十六世紀の画家クラーナッハの画面構成の分析を介してその空間構築の西欧的造形理念の展開を尋ねた。以上大きな結実を約束する実績をあげた。
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