研究概要 |
本研究は三年計画で立案した. 第一年度(昭和60年度)は主に作品の実地調査と資料の収集, およびそれによって得られた諸資料の造形面よりする検討と整理を行い, 第二年度(61年度)は, (1)必要な補充調査を行うとともに, (2)分担者毎に, 多彩な仏師と仏師組織が成立・発展する過程とその実体を明らかにするとともに, その背景を政治史, 社会史など種々の観点から考察した. 第三年度(本年度)(最終年度)も, (1)必要な追加調査を行ったほか, (2)これまで収集した資料の総合的整理と全体的な検討を行い, (3)その成果を分担者毎に, 自分の研究課題について研究成果を報告書として取りまとめた. 阪井は飛鳥時代の仏師についての文献的研究を行い, 田中は8Cの官工房から9C以降の寺院工房への変遷の過程を究明し, 清水は寺院工房が崩壊して11Cの仏所(私工房)が成立して来る過程を宗教的・社会的観点から考察した. 宮本は平安時代から鎌倉時代にかけて滋賀県にのこる円派・院派の仏師の作品を調査して新資料を紹介するとともに, 両者の様式的差異について考察し, 藤沢は, 8Cから10Cにいたる京都・奈良以外の地方で制作された地方仏の宗教的背景と, それら仏師の実体について実作品・文献の双方から研究し, 斎藤は, 鎌倉以降において各派の仏師がどのように地方にその勢力を拡大し, 制作の機会を見つけていったかという新らしい観点からの研究を行い, 根立は, 東寺の大仏師職の系譜について, 種々の文献を検討した結果, 従来不明のままのこされていた数人の仏師の系譜への位置付けを明らかにした. 以上の研究成果の詳細については別添の報告書を参照されたい.
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