研究分担者 |
柄沢 行雄 常磐大学, 人間科学部, 助教授 (70161255)
大内 雅利 明治薬科大学, 薬学部, 助教授 (60147915)
似田貝 香門 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40020490)
山本 英治 東京女子大学, 短期大学部, 教授 (50086261)
蓮見 音彦 東京大学, 文学部, 教授 (50014684)
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研究概要 |
本研究は, 共同研究者中の主要メンバーが過去においておこなった調査地域を追跡調査し, 農村家族と農村構造の変動を明らかにすることを目的とするものであった. 全国6地区の調査をおこなったが, 最大のエネルギーを投入したのは, 秋田と岡山の2農村における追跡調査である. 両地区に関しては, すでに昭和28年, 43年に調査がおこなわれ, 研究成果が公刊されている. 今回の調査は第3次の調査であり, 同一地域を対称とした同一質問項目による農民意識の30年余に及ぶ長期期間にわたる追跡調査は日本はもちろん, 世界でも過去に例がない. その点でも本研究は農村社会構造の長期的な変動に主体的条件から迫る新しい試みであると同時に, 調査論, 調査方法の発展にも貢献しようとするものであった. 昭和28年から43年にかけての農民意識の変化は, 焦点をあてた家族, 村社会, 国家に対する態度の諸次元においてドラスティックだった. 28年には家制度重視や国家主義的態度など伝統的意識と近代主義的意識がきびしい葛藤状態におかれていた. 43年には近代主義的, 個人主義的方向に意識は変化し, 家意識や国家主義的態度が弱まり, 現実生活を重視する考え方が強まっていた. 60年には農業衰退の現実にいらだちを示し, 農本主義的立場からの社会批判を強めながらも, 全体としては43年以降意識変化はむしろ緩慢で, 現実主義的に生活を重視する考え方がより強く定着してきている. しかし, 家族や村社会に関しては次元により伝統尊重的態度が強まっている. 戦後40年の平和と経済成長の下で現実主義的な生活重視の考え方が基本となり, それと伝統主義的態度が矛盾なく調和して統合されるにいたっている. しかし, 個人主義態度も強まっており, 伝統の地盤の上に, 現実生活重視の立場から, 客観的な社会条件の変化をとりこみつつ, ゆるやかに農民意識は変化しつつある.
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