研究分担者 |
古林 森広 兵庫教育大学, 学校教育学部, 教授 (80043397)
今永 清二 広島大学, 文学部, 教授 (60033502)
好並 隆司 岡山大学, 文学部, 教授 (70032688)
森田 明 大阪市立大学, 文学部, 教授 (20078455)
横山 英 広島大学, 文学部, 教授 (30033468)
|
研究概要 |
61年度は三箇年計画の第2年度にあたり、各分担研究者はこれまでの研究の蓄積と本研究計画の方針に立脚して研究課題を設定し、さらに全体討議および個別打合を通して計画全体を貫ぬく論理にも理解を深めた。それぞれの個別研究の成果、全体的展望に係わる成果等は62年度刊行予定の研究報告書においてとりまとめられるであろう。 ところで今年度の各個別研究において注目すべき成果として、まず前近代中国社会研究では寺地遵の「湖田に対する南宋郷紳の低抗姿勢」,森田明の「明末清初における福建晋江の施氏」をあげることができる。寺地は、南宋期紹興の湖田造成をめぐって展開された王朝権力を背景とする権門層と在地地主層との闘争過程を、南宋の代表的詩人陸游を通して素描し、宋金戦争が江南域社会に与えた財政的,社会的衝撃(大量の流民の発生)としての社会変動を論じた。森田は、清初の台湾開発の指導勢力であった福建・晋江県施氏の政治的,経済的,社会的基盤を「施氏族譜」を中心史料として全面的に究明したもので、明末清初の台湾開発勢力の歴史的理解に大きな寄与を果すものであった。次に古林森広は多年の研究成果を『宋代産業経済史研究』としてとりまとめ公刊した。本書は基本的に宋代都市社会を産業形態に即して分析したものの集約であり、その意味で宋代都市の鳥瞰図であり、都市社会の変動の軌跡を示すものであって、中国都市社会研究の歴史的基礎的研究として貴重な成果をあげた書といえる。次に近代中国社会研究に関しては、横山英の「孫文の地方自治制度論」がある。今世紀初頭以来、澎湃として起った地方自治運動および地方政権樹立運動と民国5年以後の孫文の地方自治制度論との関連を検討したもので、最終的に横山は孫文の三民主義、特に民権主義の根底に地方自治が置かれていたが、それは必ずしも実態の分析からではなかったと結論づけている。
|