研究課題
総合研究(A)
第二次大戦後の国際法を、ヨーロッパ諸国間の法として発生し発展してきた伝統的国際法(近代国際法ないし古典的国際法とも呼ばれる)との対比において、現代国際法と呼ぶことは、すでにわが国の学界においてもきわめて一般的になっている。また、さまざまな分野において、現代国際法の特徴を明確に示す法現象を具体的に分析した研究成果も、少なからず発表されてきたといってよいであろう。しかし、現代国際法を国際法の構造転換としてとらえる視角はいまだに確立しているとはいいがたく、この視角を自覚的に適用して現代国際法の総体を体系的に明らかにした研究業績も存在しない。本共同研究においては、このような視角から現代国際法の全体像を把握することを究極の目的とした。そこでは、おおきくわけて三つの作業がなされた。すなわち、1.戦争観念の転換と人民自決権の確立を軸とする国際法の構造転換の基本的視座を定める作業、2.伝統的国際法の論理構造を明らかにするとともに、そこに含まれていた現代国際法への発展の契機を析出する作業、3.現代国際法という法現象がもっとも端的にあらわれている分野において、その形成と展開とを、それを主導してきた国家群の立場にとくに注目しつつ跡づける作業である。報告書においてあきらかにした二年間の共同研究の成果は、上記の究極目的にてらせばまだ初歩的なものではあるが、そのための礎石を据えることはできたと考えている。この共同作業は今後も継続されるが、さしあたりこの共同研究でえられた成果については、さらに若干の補足を行うとともに、ここでカバーしきれなかった分野と問題については他の研究者の協力を得て補充し、一書にまとめて公刊することを予定している。
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