研究分担者 |
塩谷 亘弘 理化学研究所, 副主任研究員 (30087415)
赤羽 隆史 無機材質研究所, 主任研究官
兵藤 俊夫 東京大学, 教養学部, 助教授 (90012484)
谷川 庄一郎 筑波大学, 物質工学系, 助教授 (90011080)
末岡 修 東京大学, 教養学部, 助教授 (00012378)
AKAHANE Takashi National Institute for Research in Inorganic Materials, Chief Researcher
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研究概要 |
近年, 適当な固体を減速材として用いることで, 通常の白色陽電子線をかなりの効率で単色・低速化する道が拓かれた. かくして得られる低速陽電子ビームは既に固体表面や気体分子散乱の研究に利用され, この分野の様相を一変しつつある. かかる世界の趨勢に対処するため, 本研究班は3年前, 筑波の電総研ライナックを用いてパルス状の強力な低速陽電子ビームを作製しそれを物性研究へと役立てる道を拓くべく組織され, 初年度先ず, 谷川・末岡等が殆ど手作りでビームラインを完成させた. このビームラインは以下の事情から, そのままの形で使用されるには至らなかったが, 確実に貴重な技術習得の機会となり得た. 本班のこのような活動が契機となって, 電総研でのビーム開発計画は61年度より科学技術振興調整費を得て本格化し, 現在, 赤羽・塩谷・谷川・千葉が電総研スタッフと協力して大規模な建設・調整作業を行なっている. 既に10^8個/秒のオーダーの低速ビームを確保しうる見通しが立ち, また世界で初めての線型の陽電子パルス伸張方式が採用されて, 10ミリ秒程度の幅のパルスの取り出しにも成功している. 他方, 伊藤・末岡・長谷川・兵頭らによる原研ライナックを用いたビーム建設計画が62年度より重点領域研究「表面新物質相」の支援を得て活性化し, 現在ビームラインの建設を終えて, ビーム質の向上に努力中である. また最近では, 世界に先がけて「低速陽電子ファクトリー」を建設しようという計画も育ちつつある. このように, 本研究班が当初意図した電総研ビーム開発計画自体は事実上発展的に解消し, 第2年度以降, 本班の活動は, 2, 3のビーム建設計画を支援しつつ, 研究者間の情報交換の促進と周辺研究の活性化をはかる形へと漸次移行せざるを得なかったけれども, 本研究班結成の目的は, 予期せぬ形で確実に果されつつあることを慶びたい.
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