研究概要 |
海底地盤内の土に加わる波浪による繰返し荷重は, 主応力の連続的回転を伴うという特徴を持っている. このような応力状態を再現した室内実験を実施するため円筒型供試体を用いたねじり三軸試験装置を改良整備した. そして, 豊浦標準砂を用いて繰返し載荷試験を色々な条件のもとで実施し, 土の液状化特性を調べた. その結果, 主応力の連続的回転を伴う繰返し載荷のもとでは, 回転が無い場合の繰返しに比べて砂の繰返し強度が20〜30%低下することが判明した. 次に, 海底の末圧密軟弱粘土の挙動を調べるため, 末圧密の程度を色々に変えた粘土試料を準備し, 三軸せん断試験による強度特性を調べた. その結果, 安全圧密粘土に比べて著しく強度が低下することが示され海底の大規模地辷りの発生原因の一つを解明することができた. 次に海中の大口径杭の挙動について研究を行った. 一般に, 波浪によって杭が受ける力には2種類ある. 一つは, 直接波浪が杭に当って生ずる動水圧であり, 他は波浪によって生ずる海底地盤の変形に伴って杭の根入れ部に伝えられる繰返し力である. 波浪の高さが低く, その及ぼす力が弱く海底地盤が弾性的挙動をするときには, 地盤を通して杭体に伝えられる力の影響は小さく, 杭体内に生ずるモーメントは動水圧のみを考慮して算定してもよいことが判明した. しかし, 波浪が大きくなると, 主として海底地盤に伝えられる繰返し応力によって土に塑性変形が生じ, そのために杭の変形モードが著しく変化し, 相当大きなモーメントが杭体内に誘起されることが判明した. 次に, 海底地盤の波浪伝播時の挙動を調べるために, 静岡県の清水港内の海底に間隙水圧計を2.5mと3.5mの深さに埋設した. 大波浪時の観測を繰返した結果, 海底地盤内の土に作用する有効応力が波浪伝播時の繰返し応力によって相当変化しうること, そのために地盤の安全性が低下することが示された.
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