研究概要 |
最近わが国に発生したいくつかの地震において, コンクリート系建物の柱や壁に斜めの大亀裂が発生し, これが原因で建物が倒壊したり大被害を受けた例が数多く観察されている. この破壊についての実験的研究は主として油圧系試験機による静的繰返し加力実験に基づいて進められてきた. このような実験では, 試験体の全面に発生した細かい斜め亀裂が荷重の増大と繰返しによって進展し, 全体として剛性の低下を来しながら最大荷重に達するという結果になっており, 実際の地震時にみられる数少ない大亀裂により破壊とは様相が異なっているのが現状である. 本年度の研究内容は以下に列記する項目に分かれている. 1)鉄骨柱梁接合部の衝撃実験を行った結果は試験体数も少なく定量的な結論は得られなかったが, 鋼材の破壊靭性値と溶接部の遷移温度が変位速度により20℃〜50℃程度高くなることが確認され, 接合部の破壊も同様に遷移温度の上昇が認められた. 今後, 歪速度と溶接接合部の破壊性状の検討は耐震安全性の重要なテーマの1つの考え, 検討を継続する予定である. 2)鉄筋コンクリートの柱部分を対象とした大きな斜め亀裂の発生メカニズムを検討するための衝撃破壊実験は, 同一形状で変位速度と上部構造の慣性力により発生する拘束の程度を変化させた試験体を用いて行った. その結果, 同一試験体ではじめてせん断破壊を別々に発生させることに成功し, その発生メカニズムも明らかにすることができた. 歪速度が大きくなるにしたがって, コンクリートの強度と鉄筋の降伏点が上昇すること, 上部構造の拘束により曲げ強度がせん断強度に比ベ大きく上昇することのためであり, 地震時の層間速度に大きく関与している.
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