研究課題
本年度は、ディジタルX線撮影法によるじん肺症の標準X線写真を決定するための準備として、最適な画像処理条件決定のための実験、および前年度に作成したILO標準フィルムデータベースに基づき、自動診断のためのアルゴリズムの開発を行った。前者については、健常者6例、じん肺44例のディジタルX線写真を収集し、それらの進行度を決定すると共に、多数の画像処理条件の中から適当と考えられる条件を絞り込む作業を行った。その結果、階調処理および濃度-露光量の特性曲線については最適条件を設定することができた。残る周波数処理条件については、現在多数の医師による読影実験を実施中であり、近日中に最適条件の決定をみるものと考えられる。後者については、4種類のそれぞれ独立した手法によりじん肺陰影密度の評価法を検討中である。その中の2つはテクスチャ解析の手法に属するもので、二次元線形予測モデルに基づいてパワースペクトルを評価することにより、陰影密度を推定するものと、濃度勾配ベクトルの分布状態から密度評価を行うものの2つである。いずれも、ILO標準フィルムを用いた診断実験では70〜80%(4クラス分類)の精度で診断可能であることが確かめられた。また、じん肺陰影を直接画像処理手法により抽出する試みも行っており、その中の1つである等濃度線処理を基礎にした方法では小円形陰影の大きさの分類で70%を越える精度で分類できることを確認している。これらの手法はそれぞれに個性があることも明らかになっており、これらの手法を併用することにより、それぞれの手法の欠点を補うことも可能であり、高精度な診断システムの実現に明るい見通しを得つつある。
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