研究概要 |
60年度は, 国内所蔵一次文献の調査とその複写依頼および国内未蔵の一次文献の一部を入手し, 「研究センター」化を図り始めた. 研究成果では, 従来の研究状況の概括・検討を通して, 各実証研究の視点を確立, (1)物理学実験の性格と変容の特徴, (2)解析力学史における循環座標の位置づけ, (3)熱力学の解析化, (4)「力学批判」の史的検討, (5)電磁気学とベクトル演算, などのテーマで研究を開始し, 併せて当該研究関係の研究者を招き, 研究の拡張・発展を図った. 61年度は, 前年度に引き続き, 国内所蔵の文献の調査・収集に努め, 国外からの書籍の入手とともに分類・整理をおこなった. これにより, 「横断的・統一的視点」を遂行する上で資料面からの準備作業が進んだ. 研究の面では, 入手した文献に基づき, 実証的研究をさらに拡げ, (1)熱化学と熱力学の関連, (2)力学と職業教育との関連, (3)スペクトル分析や熱ふく射研究の光学, 熱理論および力学への影響, (4)作用量子の次元解析による導出, (5)実験手段の系と生産技術との関連, (6)モデル・アナロジー論と熱・光・電気の理論的解析などの研究成果が挙げられよう. 62年度は, 二年間に収集した原典資料や図書の整理・整備をおこない, 19世紀物理学史の「研究センター」としての機能が発揮できる条件が整った. 実証的研究では, (1)熱ふく射現象の原子論的把握の特徴ならびにふく射実験の変遷の特徴, (2)物理学理論の確立とモデルなど理論的手法との関わり, (3)熱平衡問題の捉え方の変化, などに成果を見ることができる. その上で, 19世紀物理学史の全体像の構築に努め, さらに, 工学史や思想史との関連をも考慮し, 広く歴史の中に位置づけた. なお, 成果は「研究年報」に発表し, 広く社会に真を問うている.
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