結晶場の効果を利用した反応設計

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 60303027
• 研究機関: 電気通信大学
• 研究代表者: 岩崎 不二子 電通大, 電気通信学部, 助教授 (10017329)
• 研究分担者: 細矢 治夫 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (10017204) ; 大沢 映二 北海道大学, 理学部, 助教授 (40001763) ; 甲斐 泰 大阪大学, 工学部, 助教授 (40029236) ; 大橋 裕二 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (40016118) ; 戸田 芙三夫 愛媛大学, 工学部, 教授 (50036232)
• キーワード: 分子設計 / X線結晶構造 / 不斉反応 / 表面構造 / 包接化合物 / 分子力場 / 固相反応 / 反応立体経路

研究概要

本研究は結晶場の規制を反応に利用することによって新しい物質の開発、設計に応用することを目的としている。60年度に引続き本年度も結晶、表面における分子構造と分子間、分子内相互作用の関連についてX線回折法、赤外分光法、超高圧電子顕微鏡などの実験手段と、理論化学的な計算による構造予測などの面から研究を行なった。各分担課題間の連絡を密にするため12月には東京で中間成果の公開発表会を開催し活揆な討論を行なった。各分担課題の研究内容は以下の通りである(番号は分担課題番号に対応)。
1.戸田は固体-固体反応によるホスト-ゲスト錯体形成現象を見出し、錯体中におけるゲストの立体規制反応に応用することによって、錯体の結晶場を触媒的に利用し不斉化合物の生成を行なった。大橋はコバロキシム錯体のβ-α異性化反応を混晶中で行なうことによって不斉導入を試みた。
2.藤原は包接化合物結晶中でのゲスト分子の選択的取込みについて検討するためにX線結晶構造解析を行ない、伊藤はモルデナイトの吸着特性をX線回折・赤外分光法によって明らかにした。
3.小林は超高庄電顕によりポリフタロシアニンの導膜の多形と機能性の関係を検討し、原田はペニング分光によって表面構造解析を行なった。
4.甲斐はジエチニルベンゼン誘導体の構造と放射線固相重合の関連について明らかにし、中筋は多次元分子性導体の合成,構造解析を行ない、次元性の増加を実現した。岩崎は有機硫黄化合物中における硫黄原子の原子価拡張性と反応の関係について構造化学の面から検討した。
5.大沢は有機物結晶構造解析を出発点とする力場計算を行ない、これを天然物合成の反応設計に応用した。細矢は原子の古典的酸化数概念を量子化学的に再検討し、一連の有機物に対する酸化数割振りの規則性を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.Sect.C. 42. 121-124 (1986)
• [文献書誌] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.Sect.C. 42. 124-127 (1986)
• [文献書誌] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.Sect.C. 43. 80-83 (1987)
• [文献書誌] F.Iwasaki: Bull.Chem.Soc.Jpn.60. 1255-1259 (1987)
• [文献書誌] F.Toda: Isr.J.Chem. 25. 338-352 (1985)
• [文献書誌] F.Toda: Chem.Letter.109-112 (1986)
• [文献書誌] A.Uchida: Nature(London). 320. 51-52 (1986)
• [文献書誌] Y.Ohashi: J.Am.Chem.Soc.108. 1196-1202 (1986)
• [文献書誌] T.Fujiwara: Acta Cystallogr.
• [文献書誌] M.Ito: Acta Crystallogr.Sect.C.
• [文献書誌] M.Ito: Zeolite.
• [文献書誌] S.Fujisawa: J.Am.Chem.Soc.108. 6505-6511 (1986)
• [文献書誌] N.Uyeda;T.Kobayashi;K.Ishizuka;H.Inokuchi;G.Saito: Mol.Cryst.Liq.Cryst.25. 103-112 (1985)
• [文献書誌] T.Kobayashi;H.Kurata;N.Uyeda: J.Phys.Chem.90. 2231-2236 (1986)
• [文献書誌] Haruo Hosoya: Computers & Mathematics with Applications. 128. 271-290 (1986)
• [文献書誌] Haruo Hosoya: "Mathematics and Computational Concepts in Chemistry".N.Trinajsti【C!´】ed.,Ellis Horwood,Chichester,England. Chap.11. 110-123 (1986)
• [文献書誌] Haruo Hosoya;A.Uchiyama;M.Kadota;K.Chida,M.Aida;T.Yamaguchi: Natural Science Report of Ochanomizu Univ.37. 133-168 (1986)
• [文献書誌] Haruo Hosoya: Croat.Chem.Acta. 59. 583-590 (1986)
• [文献書誌] Keiko Takano;H.Hosoya;S.Iwata: J.Chem.Soc.Jpn.(Nippon Kagaku Kaishi). 1395-1403 (1986)
• [文献書誌] Keiko Takano;H.Hosoya;S.Iwata: "Applied Quantum Chemistry",V.H.Smith,Jr.,et al.eds.,D.Reidel Publ.Co.375-393 (1986)
• [文献書誌] H.Ozaki: J.Am.Chem.Soc.109. 950-951 (1987)
• [文献書誌] M.Iyoda: J.Am.Chem.Soc.108. 5371-5372 (1986)
• [文献書誌] T.Sugimoto: J.Am.Chem.Soc.108. 7032-7038 (1986)
• [文献書誌] K.Nakasuji: J.Am.Chem.Soc.108. 3460-3466 (1986)
• [文献書誌] K.Nakasuji: Chem.Lett.969-972 (1986)
• [文献書誌] E.Osawa: Chem.Ber.119. 2350-2361 (1986)