研究概要 |
細胞を構成する生体高分子の生合成の素反応群と、それを支配する遺伝子群とを、理想的な細胞研究の材料である大腸菌を用いて、総合的に研究し、細胞複製機構とその遺伝的制御を分子レベルで理解することを目的としている。 大腸菌の全遺伝子数は約数千と考えられるので、温度感受性欠損を持つ突然変異株を約1万分離すれば、全遺伝子について最低1つの変異株がそのコレクションに含まれると期待できる。廣田は、独立に生起した突然変異株を偏りなく約5千分離した。この変異株コレクションから見出した生体高分子生合成の変異株を用いて、生合成素反応とその遺伝的調節の研究を推進した。 伊藤は、細胞表層蛋白質の膜透過(分泌)に働くsecY遺伝子産物を同定して構造を明らかにし、その機能を解析した。また、新たに数株の分泌欠損変異株を見出して分析した。鈴木は、細胞表層の生長に働くペニシリン結合蛋白質1bの3成分α,β,γのうちαとγが一次翻訳産物であること、βは膜分画調製時にαから生じることを示し、α→β変換欠損変異株を見出して、各成分の構造を決定した。西野は、細胞壁合成に働くイソプレノイド生合成系の欠損変異株を数株見出し、それぞれで欠損している酵素を明らかにして、遺伝解析を進めた。原・廣田は、細胞分裂に働くペニシリン結合蛋白質3が、分泌蛋白質であり、一部がリポ蛋白質となっていることを示した。また、そのプロセシング欠損変異株を見出し、プロセシング過程を解析した。水島は、培地浸透圧に応答して相対量の変動する細胞外膜蛋白質の遺伝子ompF,ompCのプロモーター領域の構造を決定し、また、その発現調節因子であるOmpR,EnvZ蛋白質を解析して、発現調節機構を明らかにした。
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