研究概要 |
多くの疾病が分子的に解明される傾向にある。免疫疾患,癌,細菌毒素の作用などはその代表例である。病理学は診断業務のため形態学重視を余儀なくされていが、単クローン抗体などの進歩から、分子病理学的理解を避けて人体病理学もありえないと言える。本研究では、異なる分野の病理学者が各分野の進展を持ち寄り、分子生物学の基礎の上に立った疾病理論を交換し、新しい病理学の体系化を試みた。それぞれの研究者の成果は次ぎに示す。 [杉山]発癌機構,糖尿病の分子病理学,[菊地]免疫応答機構の分子病理学[森]代謝異常の分子病理学,[下里]各種の腫瘍癌遺伝子発現と腫瘍マーカー,[玉置]免疫と分子病理,[中根]細胞生物学と疾病研究,[内野]アミロイドの分子病理学,[福西]内分泌の分子病理学,[吉永]免疫応増幅の分子機構,[高橋]脂質蓄積症など各分野について、分子病理学の観点から研究を推し進めた。特に、遺伝子工学,遺伝子解析,蛋白構造解析,単クローン抗体法による免疫学的方法,分子雑種法など新しい手段を用い、電子顕微鏡での微細構造と分子構造の関連を究明するなど、形態学と分子科学の接点にたって両分野の研究成果の融合に重点をおいた。 一方において、共同の作業として、(1)分子病理学の素材・情報を広く集め、(2)専門分野間で情報交換を行った。(3)疾病の発生機構を明快にし、病理学の現代化,再体系化のサンプルを設定し、(4)病理学と分子科学の結合の検討のために、秋の病理学会のさいに会合を持ち、この会合において、海外での病理学と分子科学の関係の実情調査結果を検討した。この結果、今後、病理学の発展のためには病理学者の分子科学に関する関心の維持が重要で、それには、病理業務に追われている現状の解決が不可決と考えられた。今後、分子原理学の体系化のために最後の年度を予定している。今年度の実績のもとに来年度の班活動を完成させたい。
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