研究概要 |
種々の神経ペプチドの生理的役割と臨床的意義について研究を行った. CRF, GRFは下垂体に作用する視床下部ホルモンであるが, 同時に食物摂取など中枢神経系への作用も有していた. GRFはまたオピオイドペプチド, セロトニンなどによるGH分泌に重要な役割を演ずることも明らかになった. 血中GRFの測定及びGRFに対する血漿GHの反応の検査は視床下部疾患の診断に役立つことが明らかとなった. VIP, PHIなどのペプチドはプロラクチン分泌促進因子として作用するが, 末梢自律神経系にも存在し, 膀胱, 陰茎などの機能調節に重要な役割を演じていることが示唆された. TRHは下垂体前葉ホルモン分泌に関与する視床下部ホルモンであるが, 脳の他の部位にも存在し, 筋萎縮性側索硬化症や脊髄小脳変性症でその濃度が変化する事実が観察された. タヒキニンにはP物質の他にニューロキニンA, Bが存在する. 線條体〜黒質系でP物質とニューロキシンAはほぼ平行して変動するが, ニューロキシンBの変動は異なることが観察された. ソマトスタチンはGH分泌を抑制する視床下部ホルモンであるが中枢神経作用も有しており, GRF分泌促進作用を示した. またアルツハイマー型痴呆脳ではソマトスタチンニューロンに異常を認めた. バソプレッシンも下垂体後葉ホルモンであるが視床下部作用を有しており, 痴呆脳において大脳皮質バソプレッシンの濃度の低下を認めた. 新しい神経ペプチド, ガラニンはGH及びプロラクチン分泌を促進することが認められた. しかしその生理的意義はなお不明である. 以上重要な神経ペプチドについて, その生理的意義に関していくつかの新しい知見を得るとともに, 視床下部の器質性疾患や2, 3の変性性神経疾患における意義の一端を明らかにすることができた.
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