研究概要 |
本研究は, 血栓の形成, 溶解の要因として近時最も注目されている問題点即ち血管内皮細胞の血栓の形成, 溶解に関連する細胞生物学的特性, 内皮細胞障害の要因とその血栓形成における意義, 血小板の粘着, 凝集機構, 凝固・線溶系因子, 特に活性化ならびに制御因子の蛋白化学的, 免疫化学的, 形態学的および遺伝子レベルでの研究を多角的に進めてきた. 更に, これ等の基礎的研究の成果を基に, 血栓形成時, 又, その準備状態における凝固, 線溶系因子の動態, 血小板機能を酵素化学的ならびに免疫化学的に解析して血栓症ならびに臓器虚血の発生病理, 診断, 治療法, 予防法を研究した. 血栓の形成, 溶解機序に関する研究としては, 組織因子, 第VII因子, トロニボモジュリン, プロテインC, プロテインS, PAインヒビター, α_2プラスミンインヒビター, 酸安定性トリプシンインヒビター, カルフォビンディンを中心に蛋白化学, 酵素化学, 遺伝子レベルでの解析を行い, 一部の因子については酵素免疫測定法の確立, 免疫組織化学的検索による組織内局在の検討を行った. 血小板の活性化, 凝集機構については, 膜蛋白GPI, IIb/IIIaの免疫電顕的局在, Fbgならびにトロンビン結合部位に関してモノクロ抗体および合成特異ペプチドを用いた酵素化学的研究を行い, これ等膜蛋白の活性発現が血小板の活性化, 凝集に重要であることを明らかにした. 血小板のアラキドン酸代謝に関しては, シクロオキシゲナーゼ, ローリポキシゲナーゼに対するモノクロ抗体を用いた酵素免疫測定法を確立した. 血栓症, DICならびにその準備状態における各種抗血小板剤, 抗凝固剤の適応ならびにその効果について臨床的検討を行うとともに, 脳梗塞症や心筋梗塞に対するPA療法の効果, 適応の臨床的解析を行った. これ等の総合的研究の成果は, 血栓症の発生病理の解明とともに, 本疾患の診断, 治療, 予防法の確立に貢献する意義は極めて大きいと考えられる.
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