研究課題
総合研究(A)
高齢化が進む社会において、健康を持続させるためには健常な口腔機能を維持することが重要な課題の一つとなっている。本研究では咬合・咀嚼機能に関与する歯周組織(歯肉・歯根膜、歯槽骨、セメント質)の加齢に伴う形態・機能・代謝の変化を組織学的・生化学的に動物実験により追求すると同時に、臨床基礎的立場から歯周組織の老化を若年から高齢者に対して検索し、動物実験とヒトとの間の相関を求め、以下の成果をえた。1)ヒト歯肉の線維芽細胞(Fbと略称)培養においてFbの膠原線維形成像と吸収・分解像とを同時にとらえた。またラットの成長とともに歯肉・歯根膜のFbが膠原線維を増加し、一方では貧食を起こすことが電顕的に確認され、歯周組織改造にFbが強く関わることを示した。2)ウシ下顎中切歯歯根膜のFbは皮膚と異なった骨タイプ類似のALPaseを有し、さらに歯小嚢・歯根膜ALPaseを老化指標とすることを生化学的に示した。3)幼若ハムスターの臼歯歯頸に系結紮して飼育後、歯槽骨の骨吸収・添加を光顕・電顕観察、非結紮に比べ活発な水平方向の骨改造を認めた。これは幼若な歯槽骨に付与された適度の外力が関係あることを示唆し、加齢との対応が注目される。4)成長ラット歯肉溝へのゴム輪挿入2週間後の歯周ポケット、セメント質表面の光顕、走査電顕観察により、根面吸収の発現のセメント質未修復を認め、今後加齢との関係を追求する。5)生体組織中のヒスタミンを高速液体クロマトグラフィーで最適に測定できる方法を追求、加齢による唾液・歯肉溝浸出液での変化を求める道を拓いた。6)歯周病患者、精薄成人歯槽骨は加齢的X線吸収度の増加傾向がみられ、機能歯(小臼歯)と歯周疾患根分岐部(大臼歯)での骨吸収発現は年齢層と関連しない場合が示された。7)ヒトの歯の動揺度を生体でしかも客観的に測定し、歯周組織の加齢による変化の調査に応用することを明らかにした。
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