研究概要 |
スポーツ中の突然死の機序としては1.器質的心疾患があり、それが原因となり不整脈を合併し死に到るものと、2.特に器質的心疾患はないがスポーツ中に生ずる各種の生理学的変化が過剰反応を生じて急死に到る機序である。スポーツ中におこる突然死は前者が圧倒的に多いと考えられ、またその突然死の多くは瞬間死とされ、その意味で心室頻拍,細動のごとき頻脈性不整脈がその直接の死因と考えられる。そこで、これらスポーツマンの突然死の原因として、通常のメディカルチェックにてみられるスポーツマンの不整脈がどのような関連をもっているかを明らかにする目的で、公開シンポジウム「スポーツと不整脈」を昭和61年10月25日、東京で開催した。 その結果、(1)スポーツマンでは通常の人より徐脈性不整脈の頻度が高いこと、(2)運動に対する心室性不整脈の応答は冠動脈疾患の診断,重症度評価,予後推定に役立たないこと、(3)若年スポーツマンの器質的心疾患を伴わない心室頻拍←→は比較的予後は良いと考えられること等が明らかとなったが、スポーツマンにみられる頻脈性不整脈のメカニズムは依然として不明であり、今後さらに詳細な長期にわたる検討が必要と考えられ、頻脈性不整脈を有するスポーツマンの予後,運動継続の可否等現時点で明確な解答を引き出すことは難しいと考えられた。次にスポーツマンにおける突然死予防のための健康管理システムを開発する上で健康管理データは重要な意味をもつと考えられ、体育系学生1692名(平均年齢18才)と人間ドック受診者4197名(30代)の2群で、血圧,検尿,安静時12誘導心電図を比較検討した。体育系学生の安静時心電図は一般成人に対する診断基準では、一般健常人に比し極めて高い異常率を示した。とくにスポーツ心に特徴的心電図所見を除くと、一般健常人に比しST-T異常が多く、これらは潜在性の器質的心疾患の在している可能性も否定できず、精査の必要性が強調された。
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