研究概要 |
本年度は, 文脈を考慮した高度な翻訳システムのための基礎技術として, 文章解析, 文章生成の2つの測面からの研究を行った. 特に, 文章解析, 文章生成の両モデルの統合制に注意を払い, 両過程における文章の結束構造の処理機構を次のような観点から研究した. 1.日本語文章における話題構造の認識システム:日本語文章に頻出する省略表現を代名詞, 指示連体詞による照応表現と同様の照応表現と捉え, その処理モデルを作成した. 特に, 照応表現が文章の話題推移の構造と密接に関連していることに注目し, 話題推移の構造の表現, および, それに基づく照応表現の処理機構を計算機プログラムとして実現し, その有効性を確認した. 2.中間表現からの日本語文章生成システムの作成:文章の結束性を保証する要因としては, 1の研究で明らかにされた照応表現による結束性のほかに文の接続形式による結束性がある. 本研究項目では, 表層の文接続形式を決定するための中間表現の中で, 特に, 筆者の持つ意図の構造に注目し, これを表示する構造を設定した. また, この文脈構造の表示から具体的な表層表現を選択するアルゴリズムをシステミック文法の枠組で記述し, 計算機による文章生成の実験を行うことによってその有効性を確認した. 3.中間表現からの中国文生成システムの作成:2と同じの枠組みが日本語以外の言語での文章生成にどの程度有効であるかを確認するために, 同じ枠組みによる中国語文の生成実験を行った. この実験は, まだ文脈要因を反映するまでには至っていないが, 人間が種々の文脈要因を指定することによって, 多様な中国語文が生成できることが確認できている. 文脈要因の反映を自動化するのは, 次年度の課題である. 以上のように, 本年度は生成, 解析の両側面での文脈処理モデルを開発した. これの統合は次年度の課題である.
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