生体内で安全に分解吸収される再建外科手術材料を開発するために、ポリ乳酸を主体とした吸収性埋植用医用材料の研究を行っている。材料の合成法、成形加工法、物性、生体内の吸収過程、生体反応、手術材料としての有効性などについて検討している。 1.合成法 ポリ乳酸・ポリグリコール酸の合成法を検討し、分解速度を早める場合は重合収率を下げ、分解速度を遅らせる場合はL体乳酸ポリマーを用いる方法を確立した。 2.成型加工 L体乳酸の小径の繊維と、これを用いた縫合糸の成型に成功した。また、板、棒、ピンは加熱圧延したプレートより任意の成状のものが成形可能となった。 3.物性の検討 ポリ乳酸、乳酸グリコール酸共重合体の材質と、初期物性を測定し、応力、ひっぱり強度で臨床応用にたえうる値であることをみた。 4.生体反応 材質を変えた種々の材料を動物に埋入し、重合収率の低い材質は分解速度が早く、それだけに組織反応もあるが、分解後の組織修復も早く良好である、分解の緩徐な材料の組織反応は極めて少ないことを確認した。 5.応用 使用目的にあわせて、ポリ-L-乳酸縫合糸、ポリグリコール酸不織布によるプレジェット、ブロスター、ポリ乳酸・カプロラクトン共重合体による柔軟な癒着防止用膜、ポリグリコール酸繊維による織布による軟組織補填材、ポリ-L-乳酸プレートによる胸郭支持プレート、ポリ-L-乳酸による肋骨固定ピンなどを作製し、動物実験を行い、組織反応も従来の材料より少ないこと、手術材料として有効であることを確めた。
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