昭和60年度の研究実積概要を摘記すれば次のとおりである。 1. 広葉樹林に関する基礎的調査 (1).水文観測:試験地100haにつき量水ダム2基(流域各50ha)を設置し、60年度より本格的観測に着手した。1流域を設業区、他を対照区としている。 (2).微気象観測:広葉樹二次林の微気象は樹種の小分布や天然更新に重要な役割を持つ点に留意し、ブナ林、コナラ林を中心に、稚樹の発生、消失、生長と微気象の関係を比較し、後生樹種ごとに多様な挙動を示すことが認められた。 2. 広葉樹林の育成に関する試験 (1).汚泥マット試作:都市下水汚泥のコンポスト、枝條材チップおよびマサ土を材料として、下刈省力、施肥効果を目的とする各種汚泥マットを試作した。現在までの結果は、ポリエステル系の不織布袋入りマットが所期の目的に適うものであった。 (2).三角架線による林地搬入:神崎の開発した新集材機を利用して汚泥マットの搬入試験を行い、試験地の自由な地点へ能率的に配布するのにきわめて有効であった。 (3).水質影響:汚泥マット敷設による水質変化は、現在までのところ、地表水、地下水ともに影響が認められなかった。 (4).施肥効果:昭和56年11月植裁キハダ林に57年8月汚泥マットを敷設し、60年8月毎木調査の結果、敷設区は樹高、根元直径ともに約2倍の生長を示した。 3. 広葉樹枝條材の分解調査 広葉樹材の生物分解性は針葉樹材より良好な傾向が認められた。 4. 施肥広葉樹の材質調査 きわめて顕著に生長を促進し、且つ材質も良好であった。
|