60年度の調査地域を主として中海とし、かつ精密調査をおこなうために電波測位計をもちいて位置決定をおこなった。そのためと海況によって調査範囲は中海西南部に限定されたが、データとしては大変に良いものが得られた。最近の中海の地形変化はいくつかの地域でみとめられ数cm程度の堆積がおこっていることがアトラスデソ20による地形測量から判明した。また、ユニブームによる湖底下堆積層の解析は湖沼域でははじめてといってよい良好な記録が得られ、周辺地域の完新統との対比が可能となった。完新統中海層の下底の不整合は平坦なところが多いが数mまでの谷地形がきざまれており、古河川の流域が明らかにされた。また、湖沼域に多いいわゆる散乱層が広く分布することも明らかとなった。 柱状採泥については宍道湖・中海の6地点で数10本の1〜2mのコアを得た。これらを各専門分野ごとに分割し、研究が進行している。もっとも重要な鉛の同位体210による年代測定については地質調査所の松本英二氏との共同研究がすすみ、宍道湖域での堆積速度が0.04〜0.19gr/【Cm^2】/yearであることが明らかになった。さらにセシウム234にもとづく1954年を示すピークの位置も認められ、両者の示す年代値はよく一致することから、宍道湖域での過去100数10年前までの年代の目盛を入れることに成功した。これにより土壌中の細菌類、重金属等の分布・濃集状況の解明に大きな手がかりを得ることができ、また花粉・珪薄などの変化ともあわせて、環境変遷史が明らかになりつつある。 CHNコーダについては基礎的なチェックをおえ、湖底堆積層の迅速な処理が進行した。宍道湖底資料についてはC/Nは明瞭な垂直変化を示し、花粉・珪薄、および鉛同位体年代とあわせて環境変化が追跡され、今後中海地域を含めた解析に見通しを得ることができた。
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