下記の七つの研究班において、それぞれ研究を進めた。 (1) 中国の法体系研究班では、唐の李林甫らが撰した唐律琉議に関する多くの研究業績について検討を加えると同時に、唐律が中国の法体系さらには東アジア諸国の法体系の全構造の中での位置づけについて検討した。ついで中国を異民族が支配した時期、すなわち金・元・清における法体系が、中国の伝統的な法体系にのっとりながらも、異民族独自の法体系の一部が導入されていること、具体的には元の法体系の中にモンゴル民族独自の法体系の一部がかなり強く導入されていることなどが指摘された。これらを具体的資料によって検討した。 (2) 中国の法思想研究班では、春秋戦国時代から政治に活用された法家の思想が、時代の変遷によって、どのように法体系に影響を与えたかについて多くの研究業績があるので、これらの検討を行った。ここでも問題になったことは、中国の伝統的な法思想の中へ、遊牧民族のそれが、かなり強く導入されているということであった。 (3) 北アジア諸国の法体系研究班では、中社の伝統的法体系に影響を与えた遊牧民族とくにモンゴル民族の法体系と法思想について、具体的には婚姻関係の法思想についての考察を進めた。 (4) 朝鮮の法体系研究班では、李朝期における法体系と中国の法体系とくに唐律との比較検討を行い、多くの影響について指摘された。 (5) 日本の法体系研究班では、大宝律養老律をはじめとして、日本の法体系に関する多くの研究業績があるので、それぞれについて、中国の法体系とのかかわりについて焦点をしぼって検討を加えた。 (6) 日本の法思想研究班では、中国の伝統的法思想と仏教の思想が日本の法思想にどのように影響を及ぼしてきたかについて検討した。 (7) ヨーロッパ諸国の法体系と比較検討研究班では、ローマ法の法思想が東アジア諸国とくに日本に与えた影響について検討した。
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