研究概要 |
弥生時代、古墳時代の遺跡から発見された青銅器として、島根県荒神谷遺跡出土の銅剣,銅矛,銅鐸をはじめ、福岡県鋤先古墳出土の青銅鏡,飯盛吉武遺跡出土の銅剣,銅戈,吉武大石遺跡出土の銅矛,銅戈,銅剣などをとりあげた。これらは、その埋蔵環境の調査に平行して、青銅器表面に発生するサビの分析、そして、遺物自体の非破壊分析をおこなった。 1.分析研究をすすめるにあたり、考古学的形式分類の見地から、青銅器を器種別,時代別,出土地別に分類,整理した。のちにおこなう青銅器原料の産地、および製品の生産地などについても材質面から検討するためである。 2.荒神谷遺跡では、出土銅剣の周囲の土壌を各層位ごとに採取している。これらの土壌について、銅,錫,鉛を中心に定量分析し、また、採取された土壌に含まれるサビのみならず、青銅器に付着するサビについても分析をおこなった。多くは塩基性炭酸銅であるが、サビの生成過程で土壌から取りこまれた石英や長石なども少量確認した。また、塩基性塩サビの下層には結晶質の赤銅鉱などの化合物が形成されているものと推定される。なお、一部の試料からは緑塩銅鉱が検出された。これはサビの生成過程で塩素が大きく関与していることを示している。 3.青銅器についての螢光X線分析法による非破壊分析では、その表面サビの分析を意味し、したがって、分析結果は遺物本来の組成を示さないが、定量値を推定することが可能である。たとえば、荒神谷遺跡出土の銅矛16点の錫含有量の推定値は平均17%、鉛のそれは5%前後と算出できた。さらに、錫含有量の多少で二大別できる。今後、この種の分析は試料数を増やすことによって、青銅器の比較研究を推定していく予定である。
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