研究概要 |
青銅器にみられるサビは、大きく次の二つに分けられる。青銅合金の主要成分である銅,錫,鉛を含有するものと、錫,鉛成分がきわめて少ないものの二つである。前者のような組成をもつサビは、青銅製品自体が腐食したものであり、後者のサビは、周辺からの銅成分が溶出し、製品表面を被覆しているものに多い。 非破壊的な手法としての螢光X線分析では、製品の表面の分析、すなわち青銅製品のサビの分析をすることになるので、銅,錫,鉛を含む、製品自体の腐食サビの部分を測定するようにする。本研究では、昨年度までの成果にもとずき、この種のサビを精選しての分析を推しすすめ、約500点の青銅製品について測定をおこなってきた。 銅鐸の分析 荒神谷遺跡では6点出土しており、第1号鐸が文様・型式などをもとに特異なタイプとして分類されている。また、第5号鐸が最も古いタイプのものとして、弥生時代前期末の製作品として、他の銅鐸と区別されている。こうした考古学的な考察結果と分析結果を対応させる作業をはじめた。この場合には、特異なタイプの1号鐸にのみ、多量のアンチモンが検出された。また、時期が古いとされる5号鐸の錫成分が他の試料にくらべてより多く含まれていることがわかった。こうした、考古学的形式分類に平行して材質分析の結果をオーバーラップさせる作業を継続している。 銅矛の分析 荒神谷遺跡出土の16点のほか、福岡県吉武遺跡出土の3点など、20点あまりの測定結果によれば、形式が同じでも組成にバラツキがみとめられ、今のところ形式と組成を対比できない。しかし、荒神谷遺跡出土銅矛のなかには、アンチモンを含有するものが2点認められる。今後の比較のためのファクターと成り得ると考えた。その他の青銅器についても、同様の測定を継続してすすめている。
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