本研究においては、再開発事業が、北海道及び小樽市のありうべき産業政策と整合性を持ちうるか否かという観点から基礎資料の収集に努める一方、市、商工会議所、運動関係者などから関係資料の提供を仰いだ。とくに、新聞記事スクラップについては記事見出しのワープロ編集を試み、編年体の総合索引の作成を目指している。内部において社会動学モデルの方法、事業の経済波及効果などに関する数次の研究会を開催する一方、運動関係者との意見交換、各地の地域開発関係者との交流・資料収集に努めた。また、歴史的建造物研究者を招いての市民公開シンポジウムを開催した。 一方、中研究員は、開発政策の選択において経済関係者がそれぞれ、いかなる経営実態においてかかる選択をなしたのかを究明すべく、予算管理の実態調査を企図し、予備的アンケート調査を実施した。現在は裏日本積雪寒冷都市企業の経営指標を確立すべく、全国規模に対象を拡げたアンケート調査に取組中である。 また、猪股研究員は、運河地区を中心とした再開発について市民の意向調査を実施し、市内各ブロック毎の無作為抽出373名の住民からアンケート解答を得た。調査内容は小樽のまち、歴史的町並み、運河問題、市政、小樽の今後の活性化の5点にわたったが、特に、道々臨港線の6車線拡張の現状を肯定するものが過半数に迫っているものの、運河の全面保存に執着するものが30%近くもいたことが明らかになった。また、今後の活性化について観光と商業に重点を置くべきだとする意見が多いことも分った。さらに安田研究員は、港湾都市の衰退原因研究の観点から小樽運河問題に論及し、運動関係者は、「港湾都市再生と活性化という都市経営戦略立案のなかで、小樽運河を活かす道を考えるという、いわゆる『港湾都市再生の論理』をもっと前面に打ち出すべきであった」との提言をなしている。
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