本研究の目的は定住圏・広域行政圏など実際の行政面における国土計画・地方計画を規定するリージョナリズムの考え方を地理学の立場から理論的に基礎付けることにある。そのためには現実の地域構造の実態を的確に把握する必要がある。事例地域として首都圏をとりまく周辺地域たる山梨県・長野県・福島県をとり、その内部にある盆地群とそれぞれ所在の地域中心都市を目標とし、さらにそれらの上位都市・下位都市との階層関係をも考慮しつつ、全体として都市-農村関係を中心とする地域構造をとらえようとするものである。中間的に明らかになったことをまとめると以下のようである。 (1) 農業・農村面からの考察においては事例地域は果樹園芸(ブドウ・モモ・リンゴ・ナシなど)の盛んな地域であり、これらの市場関係を通じての盛衰・増減がひいては地域構造に反映すること、兼業農家労働力の通勤流動を含む農村の生活圏が交通の発達を通じて地域中心都市へと拡大しつつあること、また労働力の転出入など人口移動は京浜地方を中心として益々増大しつつあること。 (2) 工業面では中央自動車道の開通を契機として、近年地場産業を主体とする地域に、先端技術産業など機械工業を中心とする近代工業の進出が顕著で、京浜→郡内→甲府盆地→諏訪盆地→松本・伊那盆地と連なる新たな工業配置システムが形成されつつあること、東北自動車道沿線地域にも同様な傾向がみられること。 (3) 都市・サービス産業面からの考察では新幹線・高速道路など交通施設の発達とも関連して大都市と地方都市・農村との間で住民の表面的な生活水準では大きな差異がみられなくなり、景観的に同質化・画一化が進行・拡大しつつあること、しかし各地域中心都市そのものの政治的・経済的機能や風格などの点を比較すると、それぞれの持つ条件からして格差があり、県庁都市でも必ずしも一率ではないこと。
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