研究概要 |
太陽コロナに接しているプロミネンス境界領域における物質の流入・流出やエネルギー收支を調べるために、乗鞍コロナ観測所の25cmコロナグラフ附置の大型分光器に、多素子光電受光器をとりつけ、プロミネンスの分光観測を行うことを計画している。 本年度は、多素子受光器部とそれの分光器への取付けや、冷却装置につき検討をし、実施した。 分光器カメラ部では、視角1.5″が60μに相当し、また線分散として0.3A/mmを使うと、60μが輝線巾1Km/Sに相当する。従って、多素子受光器の素子の大きさとして60μ×60μ以下のものが望ましい。また、カメラ部での輝度は弱く、出力光強度は0.1μJ/【cm^2】であるので、露出時間は数秒以上を必要とする。従って多素子受光器部を冷却しないと、暗電流のために飽和してしまう。暗電流は、温度を7℃低下させる毎に約半分になるので、このことから、約-20℃に冷却することが必要となる。更に、異なる輝線スペクトル3本を同時に観測する為、3個の二次元受光素子を任意の位置に配置できるようにした。冷却機を外部に置き、冷却空気を受光部内にパイプで循環させる構造を採用した。二次元素子としては、RETICON社の ImageSensorを第一候補としてテストを行った。素子数=256×256個,大きさ=40μ×40μ,飽和光量=0.4μJ/【cm^2】,平均暗電流=40ms露出で1%,受光面積=10.24mm×10.24mmで、これは大きい受光面積をもち、周辺回路が簡単なことが利点である。日本TI社のCCD素子もテスト中である。これは受光面積が8.9mm×6.6mmと小さいが、素子数が多く感度もやや高い。来年度には、乗鞍コロナ観測所でテストを行ない、最適な素子を採用する予定である。
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