研究概要 |
超高真空電子ビーム蒸着装置は電子銃を3台にし、基板マスク機構を取付け真空を破らずに3種類の多層膜が製作できるようになった。又蒸着膜厚の一様性を調ベるために基板の両側に水晶振動子膜厚計を設置し蒸着中の膜厚の変化をモニターできる。今年度製作した多層膜はMo/Si,Mo/C,Ni/Cの組合せで2d=70,110,150A,積層数N=5,10,20lp.である。これらの多層膜は特性X線Cu-Kα,Si-Kα,C-Kαによって、反射率,波長分解能,ブラッグ角が測定された。計算値と比較することによって設計膜厚と実測値は10%以内の精度でよく一致していた。各層の膜厚も1A以下の精度で制御されている。測定はマイコンによって自動的に行うシステムが完成した。基板にはフロートガラス,フロートポリシング法による研磨ガスを用いた。それぞれの基板の粗さはX線の散乱によって測定され、2〜4A(rms)の値を得た。X線の反射率はMo/Cの組み合せが最もよく計算値より実測値の方が高くなり、Cu-Kαで80%,Si-Kαで40%となった。更に今年度の実験から明らかになったことは反射率を決める要因として基板の粗さが最も重要と思われていたが、Mo/Siでは最外層にCのコーティングをするかどうかで大きく変ることである。これは不純物の混入が大きく寄与していることを示唆している。 直入射領域での特性及び波長に対して連続的に特性を評価するために分子研のUVSOR,高エネ研のPFのSOR光を用いて実験を行った。Mo/si(2d=150A,N=20)の多層膜では123〜150Aの直入射で反射率40%を得た。これは宇宙X線観測のための直入射望遠鏡を製作するために明るい見通しを得たことになる。今年度の研究から多層膜の製作法,性能評価については問題点がほとんど解決したと思われるのでいよいよ実際の観測装置を製作できる段階になった。
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