研究概要 |
本研究は、ほぼ6.7Å径の一次元細孔を有するアルミノ珪酸塩のモルデナイト鉱物中に、カルコゲン、ハロゲン等種々の物貭を閉じ込めて一次元格子の物性を研究することを目的としているが、本年度はセレン原子を対象として特に光学的性貭について検討を加えた。 1)本年度購入した真空排気装置を用いて、粉末モルデナイトを加熱脱水し、気相からセレンを注入する方法により、セレンの一次元原子鎖を作成することに成功した。 2)細孔内壁の交換性カチオンの【Na^+】を【H^+】,【K^+】,【Rb^+】,【Ni^(++)】等に置換したモルデナイトを作成し、X線蛍光分析装置を用いて交換率が略100%に近いことを確めた。このイオンを交換したモルデナイト中にセレンを導入することを試みた。 3)高エネルギー研放射光実験施設において、セレンを閉じ込めたモルデナイト試料のEXAFS測定を行ない、モルデナイト細孔中でセレンが2.34Åの原子間距離で2配位の鎖状構造を有することを確認した。 この結果を、J.Phys.Soc.Japanに投稿した。 4)光音響分光装置の光学系及び検出器の測定を行ない発注し、最近、購入した。また、低温試料室の設計を行ない、最近完成した。室温での結晶セレン及びモルデナイト中のセレンの予備的な光音響スペクトルの測定を行った。モルデナイト中のセレンの光吸収端は、結晶に比べ約1ev高エネルギー側にシフトしていることが明らかになった。イオン性の強い【Rb^+】にイオン交換したモルデナイト中のセレンでは、細孔中の強い電場勾配のため生じた欠陥状態が吸収端近傍に出現することを見出した 5)ヨウ化パラジウムを熱分解することにより、【^(129)I】をモルデナイト中に吸藏させる方法を開発し、この試料のメスバウアー測定を高精度で行なった。目下データを解析中である。
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