本研究はナノ秒時間幅のエキシマーレーザで試料を1次励起し、試料が緩和励起状態(【E_R】)にある数μ秒〜数m秒内にピコ秒幅のレーザ光で【E_R】より更に上の励起状態へ2次励起し、その際の試料の発光、吸収スペクトルのピコ秒領域での変化を測定する実験方法を確立すること、及びこの方法を用いて高励起準位間の緩和過程、それに伴って起る超高速構造変化の機構を明らかにすることである。上記研究のため(1)既存のルビーレーザを整備した。即ち発振器のルビーロッドを0℃付近まで冷却することにより発振を安定化させた。(2)エキシマーレーザ(ラムダフィジックス社製EMGIOIMSC)を購入し、既存のルビーレーザによるピコ秒分光装置と連動して実験を行えるように整備した。以上の装置整備の後、 (1)予備的かつ基礎的実験としてKI結晶を80°K及び300°Kでルビーの第2高調波の2光子吸収で励起し、励起前後(-100〜+500ピコ秒)の時間領域での吸収スペクトルの変化を測定した。その結果自縄自縛励起子及びF中心が約20ピコ秒の生成時間で生成されること、自縄自縛励起子の消滅とF中心生成とは直接の関連がないことをほぼ確認した。 (2)エキシマーレーザ単独で、【K_2】Ag【Cl_3】等アルカリ銀ハライドを励起しその発光スペクトル及び発光寿命の測定から、アルカリ銀ハライド結晶中の励起子緩和過程を検討した。 (3)強結合局在電子格子系における準位交差を共鳴2次光学スペクトルについて統計力学的観点から理論的に調べた。またF中心のホットルミネッセンスを半古典的モデルにより解析した。 以上時間差2段階励起のための装置の整備及びその予備的実験を行い、研究目的の一段階を達成することが出来た。
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