研究概要 |
鉱物の微細構造・組織と生成環境の関係を明らかにすることが本研究の目的である。60年度は以下に記す事柄について研究した。 1.かんらん石の結晶内陽イオン分布 天然のまま及び加熱処理したかんらん石(Mg-Fe系,Mg-Mn系)について研究を行なった。超塩基性岩体中のかんらん石については、MgとFeの分布を明らかにし、その熱史について検討した。得られた結果は岩石学的に推定された熱史と矛盾しない。接触変成岩中のかんらん石中のMnとMgの分布を天然のまま及び加熱処理した結晶について検討した。天然のままのかんらん石の陽イオン分布は低温での保衡状態を示しており、かなりゆっくりした冷却条件下にあったと推定された。又,加熱実験結果より陽イオン分布の温度・圧力依存性を大まかであるが明らかにできた。以上の結果より、地球内部でのMnの挙動の推定を可能にした。さらに加熱実験結果から、MnとMgの交換反応がきわめて速いことが定性的であるが明らかになった。この点については冷却史との関連でさらに研究を進めてゆく予定である。 2.石英の微細構造・組織 剪断帯(中央構造線;MTL)に伴なう領家花崗岩類中の石英に着目し研究した。粉末X線法より求めた石英結晶内の歪は剪断帯の中心に向って増大、一方石英の粒径は細粒になることを確認した。この結果は結晶歪や再結晶粒径が変形時の応力の指標になる可能性を示している。さらに、歪んだ石英粒が熱の影響を受けた場合の組織変化を検討した。MTL中心付近で比較的新しい時期に高温で貫入した岩体付近の領家花崗岩類中の石英粒内の組織を光学的に検討したが、一般的な予想と磯って、岩体貫入前の結晶内歪の大小に関係なく再結晶石英粒の粒径はほとんど同じであった。興味深い結果ではあるが今後さらに詳細な検討及び理論的・実験的な研究が必要と考えている。
|