研究概要 |
1. マンガンを主成分とするMnーMg系かんらん石であるテフロ石の格子定数は,陽イオン分布の変化に伴なって大きく変化することが知られている. 天種産テフロ石の加熱急冷実験でMnとMgがかなり低温まで結晶構造中を移動して陽イオン分布を変化させていることを格子定数変化より明らかにした. 実験結果から判断して,天然の地質体の冷却速度を考慮すると200℃以下まで移動しうると考えてよい, 法華寺野産の接触変成作用によって形成されたテフロ石の陽イオン分布は200℃以下での平衝を示していると考えられ, きわめてゆっくりした速度で冷却したと判断できた. 2. FeーMg系かんらん石の陽イオン分布の変化に伴なう結晶構造の変化を結晶化学的手法により研究した. 陽イオン配位多面体の体積や変形,陽イオン一酸素間の距離の伸縮,2つのサイトの陽イオンの温度因子の検討などした. 解析精度内で有意に変化しているが, 定量的な解釈を与えられる段階にない. こん後,さらに解析精度の言上をめざす. 又, 同様の解析は含マンガン斜方輝石についても行ない,Al置換効果や大きな陽イオン(Mn)による効果が明らかになった. 3.石英結晶中の不純物原子の存在様式は物理条件の変化によって変化し,この変化は格子定数を精密に決定することによって知ることができる. 剪断帯で変形を受けた石英中の不純物原子(特にAl)はSiを置換し4面体位置に多く存在する傾向があり,喬形後熱変成で再結晶した石英では結晶構造中で本来原子が存在しない空間にAlが多く存在する傾向が見い出された. 変形・再結晶過程で不純物原子は単に結晶中を拡散移動するだけでなく,その存在状態をも変化することが明らかになりつつある. この原子の移動と微細構造・組織の形成との関連について検討したい.
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