研究概要 |
超精密切削加工においては、切取厚さが極めて小さく、従来は問題とならなかった切削現象に含まれる種々の加工精度低下の要因が顕在化するという特異性を示す。本研究はこのような観点から仕上面の微視的性状を決定づける被削材のマイクロ・マシナビリティについて、その特性および精度限界に及ぼす影響を明らかにしようとするもので、本年度は次にあげる成果を得た。 (1)高精度,高剛性極微小切削実験装置の設計,製作 切取厚さが10nm台以下となる極微小切削現象の解明に不可欠である、安定した極微小送りが可能な切削実験装置を設計製作した。この装置は主軸に静圧空気軸受、送り装置に油静圧送りユニットと静圧ネジ、切込機構に弾性変形方式を採用し、送り5nm/rev,切込5nmの極微小切削が可能である。 (2)極微小切削動力計の試作 切削力が数grf以下と小さくなる極微小切削における切削現象の解析に不可欠な0.1grfの分解能を持つ切削動力計を開発した。試作した装置は切削力を同一平面上の3つの圧電型力変換器で検出し、3分力を分離測定しようというもので、1nm/grfの剛性と0.1grfの高分解能を実現した。なお、最大許容荷重は2kgfである。 (3)切削仕上面形成過程の解析手法の確立 工具逃げ面のバニシ作用によって形成される切削仕上面に生じる、料の不均一にもとづく微小な段差の生成機構を解明するために、先端半径5μmのダイヤモンド球圧子を試料面に押し込み、挙動をnmの分解能で測定できる微小押し込み実験を開発し、それを用いて段差の生成は材料の弾塑性変形の異方性にもとづくことを明らかにした。また、定量的解析のために、変形の異方性を考慮した3次元弾塑性有限要素法プログラムの開発を試みた。
|