研究概要 |
超精密切削加工においては, 切取り厚さが極めて小さくなり, 従来は問題とならなかった, 切削現象そのものに含まれる種々の加工精度低下要因が顕在する. このような特異性を持つ超精密切削加工においては工具切刃近傍の微視的変形被壊現象にもとづく仕上面形成過程を対象にした新しい微小切削理論の展開が必要となる. 本研究は, 超精密切削加工における良好な仕上面を形成するための被削材側の条件すなわちマイクロ・マシナビリティを決定する要因を明らかにしようとするもので, 次にあげる成果が得られた. 1.極微小切削現象を解明するために, 高剛性高精度切削実験装置を設計試作した. 本装置は約60mN/nmの剛性を持ち, nm台の切込および切取り厚さでの切削が行える. また, 1gf/nmの剛性と0.1gfの高い分解能と2kgfの許容荷重を持つ切削動力計の試作に成功した. 2.有限要素法を利用した工具切刃稜の切削仕上面生成過程の解析および上記装置による切削実験によって, 仕上面に残る微小な段差は被削材の結晶異方性や微小欠陥の存在にもとづく弾塑性変形特性の不均一が原因であること, 工具・被削材界面の親和性が最少切取り厚さに影響することを明らかにした. 3.温度および雰囲気を制御した炉中で工具材と被削材との接触加熱を行うことによって, 工具・被削材界面での凝着や工具損耗などの界面現象を解明できること, このようなモデル実験によって, 界面現象にもとづく被削性の評価が可能であることを示した. また, ダイヤモンド工具の損耗は被削材の酸化にともなって発生する活性化された酸素によるダイヤモンドの酸化によって生じ, 温度および雰囲気を制御することによって, 工具損耗という観点からの被削性制御の加能性があることを示した.
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