従来の熱電発電は結晶状熱電発電素子の熱低抗に起因して発生する素子両端の温度差を利用して発電するために、大きな温度差を得ることが難かしい。 本研究では一端に冷却管を溶接した薄い金属板である伝熱学的フィンに生ずるフィン効果による大きな温度差を利用し、かつ結晶状素子の代りにアモルファス状熱電材料の極薄膜を電気絶縁膜を介してフィンの上に蒸着させ、フィンの大きな温度差を積極的に熱電発電に利用するという特長のある新しい熱電発電の研究を目的とし、かつ熱工学的基礎研究を重点とする内容を持つ。研究は太陽熱の利用熱電発電などを対象とする中低温域のものと、利用ずみの300℃前後の燃焼ガスいわゆる排ガスを対象とする高温域の2つに分けて行った。中低温域の研究では先ず熱流束一定の太陽熱模擬装置を設計試作し、次に熱電材料として予備実験の結果を基に、Geを主体としInを添加したアモルファス薄膜を、ガラスおよびポリイミド電気絶縁膜を介して厚さ1mmのステンレスにICB法で蒸着させたものを製作し、これらを用いてInの添加量をゼーベック係数などの温度特性につき実験的に研究した。その結果太陽熱によってフィン効果によりフィンの両端には約20℃の温度差が得られることが分かった。しかしゼーベック係数は54μV/℃、比抵抗は約10Ωcmであまりよい性能のものは得られなかった。高温域の実験のために熱焼ガスを空気と混合させ、適当な温度域で一様な流速分布を持つような高温風洞を試作した。ついで金属板にインバーなどを用い、他は中低温と同じ方法でFe-Siを熱電材料としてアモルファス薄膜を作り、熱電発電の実験と理論研究を行った。先ず膜の熱電特性のSiの量と温度依存性を実験的に求め、前縁効果とフィン効果を考慮したフィンの温度分布の研究を行い、広い温度範囲を用いて熱電発電する場合の一般特性を理論的に求め、次で発電性能の実験結果と理論的予測値を比較した。
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