研究概要 |
新都市交通システム車両用の推進装置を対象に設計し、昭和60年度設備備品として購入した片側式リニアインダクションモータ(三相,4極,100KVA)試験装置を用いて基本的な定常運転試験を行い、理論値との比較検討を行った結果、以下の点が明らかになった。 1.このような用途を目的とするリニアインダクションモータ(LIM)は定格運転速度が40〜50km/h程度の低速であり、またメカニカルクリアランスは安全性の面から大きく(試験機では12mm)取らざるを得ないため、推力はすべりが小さくなるに従って減少するほぼ垂下特性になる。したがって必要推力を得るためには定格すべりは30%程度となり、通常の回転形誘導機と比べてかなり大きな定格すべりとなる。 2.上述のすべり対推力特性は、一次インピーダンスが等価二次インピーダンスと比べてあまり小さくないことを意味し、高速LIMに比べて一次抵抗や一次漏れリアクタンスの値が特性に大きな影響を及ぼすため、これらの値を正確に算定する必要がある。 3.実際の場合、地上に設置されるリアクションレール(二次導体)の幅は資材節減のためできるだけ狭くするのが得策である。二次導体はアルミ導体板と裏張り鉄板で構成され、裏張り鉄板の幅は一次鉄心積み厚と同程度で十分である。一方、アルミ幅は特性に非常に大きな影響を及ぼすため、アルミのオーバハングの影響を正確に考慮できる設計計算式の導出が必要である。 4.理論的研究においては、片側式LIMの特性を容易に算定するための簡易解析式を開発した。本解析法は先に研究代表者らが開発した空間高調波解析の長所、すなわち端効果や表皮効果を正確に把握できるのみならず、実際の巻線の結線法や配置を考慮できる点をそのまま生かした精度の高い近似算定法である。これによりLIMの定常特性の算定が大幅に簡略化されたため、今後の動特性の把握に有効である。
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