研究概要 |
超高速自由電子ビームを誘電率の異る互違多層薄膜を通過させたときに発生するX線の遷移放射(Transition Radiation)現象を利用して、選択的に單一波長で発振するX線自由電子レーザの基礎的研究を行うことが本研究の目的であるが、本年度はその準備として、遷移放射に関する理論的解明を主眼にして行い、次の成果を得た。 1. 多層薄膜からのコヒーレントな遷移放射の機構の解明を行い、誘導遷移放射に関する分散方程式を解くことにより、利得係数を算出した。その結果、warm beamでは利得係数は【10^(-3)】程度となり、レーザ発振は困難であるが、cold beamで長い相互作用長では3〜数+dBとなり得ることを確認した。さらに短い相互作用長での利得係数は数%になることが判明した。 2. 特に電子ビームの密度の高い場合の空間電荷がレーザ作用に及ぼす影響を調べるために、空間電荷の影響を考慮したVlasovの方程式を導き、これとポアソンの方程式を連立して解くことにより、空間電荷の影響をも含んだ分散関係式を求め、利得係数を導出した。計算機を援用して数値計算を行い、cold beamで長い相互作用の場合の利得係数の空間電荷による減少を数値的に確認した。 3. 金属薄膜形成の予備実験として、イオンビーム・デポジション法によりNbNの薄膜の形成を行い、窒素分圧4×【10^(-4)】Torr,基板温度350-500℃,膜厚600-1000Å,入力電力120Wにて、膜堆積速度500Å/h,臨界温度11.4Kを得ている。
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