日本の鉄筋コンクリート骨組では柱幅が大きいため、柱-梁接合部の体積が大きく、接合部内における梁主筋の付着劣化や接合部のせん断破壊が生じる心配はないものと信じられてきた。しかしながら、高層鉄筋コンクリート骨組のように、高強度材料を使用し、計算機による経済設計が行なわれるようになると、接合部内における損傷、特に、接合部の梁主筋の劣化と接合部のせん断破壊が重要な問題になる。 そこで、本研究では梁主筋に強度の低い鉄筋を特別に製造し、梁主筋径を柱幅の1/30程度に抑えた梁主筋の付着性能のよい試験体3体と、高強度で比較的太い梁主筋を用いた接合部の試験体3体について実験を行なった。その結果、1)梁主筋の径と強度により接合部内の付着状態をよくすると、梁に曲げ降伏が生じたのち、安定した大きな履歴エネルギー消費が確保され、大変形に至るまで接合部のせん断破壊が起こらなかった、2)これに対して、梁主筋の付着状態が悪い場合には、梁が曲げ降伏したのち、梁主筋が接合部から抜け出し、大変形では接合部のせん断破壊が生じた、3)しかし、耐力の面からは梁主筋が抜け出してもあまり問題はないが、履歴形状がスリップ形になり、エネルギー消費量が減少する、4)層間変形が1/50rad程度の変形範囲では、接合部の横補強筋量の影響は少ない、5)梁主筋量が少なく接合部のせん断応力を低くするとせん断破壊を防止することが可能であるが、梁主筋の強度を制限しないと梁主筋の付着劣化を抑制することは難しい、ことなどがわかった。 平面骨組の弾塑性地震応答解析による検討の結果、梁主筋が接合部から抜け出す場合には、地震応答が大きくなる傾向が見られる。梁主筋の抜け出し防止に関する設計の規定を設けないときには、2次部材を含めて大きな変形に対して設計で留意する必要がある。
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